ATP賞テレビグランプリ
☆ATP2009総務大臣賞総評
 

ATP賞総務大臣賞は、海外での評価に十分に耐え得る個性的な作品を顕彰するものである。今年のATP賞総務大臣賞の審査では、6作品が最終選考に残った。まず、この6作品について、その内容と審査会での委員による発言の一部を紹介しておこう。

○『長生き競争!』
初老の同級生たちが始めた「長生き競争」というゲームに、重病を宣告されたことを隠しながら転がり込んできた石原さとみ演ずる若い女性が絡むことで、「老い」「死」と向き合う人々の姿を、たくましくもユーモラスに描いたドラマ。宇津井健をはじめ、熟年同級生たちに扮した名優たちの演技が光る一方で、石原さとみ、羽田美智子が演ずる娘たちの設定が、やや不自然との声も。構成のアンバランスさが、ドラマとしてのパワーを削いでしまったのではないか。

○『ハイビジョン特集 初女さんのおむすび』
岩城山麓で、全国から悩みを抱えて訪れる相談者に静かに向き合う佐藤初女さんの「癒し」の活動を、優しく映像化した作品。「食する」ことで心が癒されていく情景を、淡い水彩画のように表現している。初女さんが優しく作る「おむすび」が、作品全体を包み込む。ただし、映像構成を重視し説明的な部分をかなり省いたことにより、理解しにくくなってしまっている構成が残念。

○『BSドキュメンタリー いのちの声~コロンビア誘拐被害者へのラジオ放送』
誘拐が頻発するコロンビアで、誘拐被害者への呼びかけを続けるラジオ放送の活動とその影響力を追った労作。拘束中、この放送を心の支えに解放されるまで耐え忍んでいたという元・誘拐被害者の証言は重い。その取材の困難さも含め、作品全体の問題提起力は、国際マーケットで十分通用するものとして、評価が高かった。

○『ハイビジョン特集 無国籍』
本人の意思に関わらず「無国籍」という環境に身を置くこととなった人々の境遇と心情を、丁寧に映像化した力作。「無国籍」問題が日常化しつつあるという現代社会の実相を、鋭くえぐり出した作品として見応えがあるとの評価がある一方で、ディレクターの想いが強すぎるためか、作品の構成にやや難があり、視聴者を混乱させるとの指摘も。

○『絵金伝説~幕末土佐を生きた闇の絵師』
血みどろの芝居屏風絵を飾るという夜祭りを150年続けているという高知県赤岡町を巡りながら、幕末の伝説闇絵師・金蔵の魅力と謎を、探検物語風に解き明かしていく。手慣れた映像表現、演出を高く評価する声がある一方で、主題が明確ではないとの指摘も。また、ナビゲーターの存在も不明確であった。

○『迷宮美術館』
国際的な名画に纏わる逸話を、クイズ形式で紹介していくユニークな知的エンターティメント作品。「美術」を、身近で楽しく、斬新な切り口で見せようとする制作者のエネルギーが伝わってくる。制作フォーマットだけでも十分に国際マーケットに通用するであろうとの声も出るなど、高い評価を得た。

以上、最終選考に残った6作品の審査では、上位2作品で委員の意見が分かれた。論議の末、最終的に今年の総務大臣賞には、『BSドキュメンタリー いのちの声~コロンビア誘拐被害者へのラジオ放送』を選んだ。


「ATP賞テレビグランプリ2009」総務大臣賞審査委員

審査委員長
音 好宏(上智大学新聞学科 教授)
審査委員 (五十音順)
天笠 ひろ美(ザ・ワークス プロデュ-サ-)
久保田 直(ドキュメンタリージャパン プロデュ-サ-・ディレクター)
黒沢 淳(テレパック プロデュ-サ-)
鈴木 嘉一(読売新聞編集委員)
長嶋 甲兵(テレコムスタッフ プロデュ-サ-・ディレクター)
中川 幸美(クリエイティブネクサス プロデュ-サ-)
(敬称略)

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